火天の城
利休にたずねよを読んだ時に、この人の描写力はすごいなと思い興味を持った作家さんの作品。時代小説はあまり読まないんだけど、時代小説ってみんなこんななの?
古城はただの入れ物ではない。住む人間にはこだわりと目的があって、それを理解した作り手が技術と経験でそれを叶える。なにかひとつが足りていなくてもいけない、大きく繊細な仕事だと知った。
伊勢に奉納する予定であった御神木を伐採し築城に使うシーンがある。御神木が信長の西洋風の安土城に利用され結末を迎えるのは宿命だったような気がした。また、素晴らしいデザインであるという前提で話が進んでいたが、西洋人の前では、日本の西洋風の安土城は悪趣味であると言われ切なかった。
石には龍が住んでいる。石にも木にも神様が宿っているという描写は、日本独特の神様への敬意を感じた。
心で城を建てると自負するのは、多くの築城の経験の中で培ってきた思いや、成功、失敗、から来るのだと思った。
心を尽くせば何事も成功するわけではない。けれど、心を尽くさなければ完璧を越えた仕事は出来ないと思う。